1の平方根と2乗しても変わらない数

実数の世界では1の平方根は $ \pm1 $ である。つまり \[ x^2=1 \] の解は $ \pm1 $ である。しかし、 $ \zten $ ではこの2次方程式の根は 自明な根 $ \pm1 $ が2つと、それ以外に非自明な根が2つの合計 $ 4 $ 個ある! この非自明な根の一つを $ \sqrt{1} $ と書くことにすると \[x = \pm1, \pm \sqrt{1}\] が $ \zten $ における解のすべてとなる。 非自明な解は $ 1 $ から始まるものと $ 9 $ から始まるもの2つある。 ここで悩ましい問題がある。それは どちらを $ \sqrt{1} $ と表記したらよいのかということである。ここで は いくつかの式の美しさを考慮して、$ 9 $ から始まる数を \[ \sqrt{1} = \cdots1249 \] と記すことにする。このとき必然的に \[ -\sqrt{1} = -(\cdots1249)= \cdots8751 \] となる。

今回のテーマは、この非自明な1の平方根を探すことと、二乗しても変わらない非自明な数つまり \[x^2=x\] をみたす非自明な数を探すことがテーマである。これら二つの数の間には 簡単な関係式が存在する。

証明の準備

$a\in \zten$ に対して、この絶対値は、1の位から左に見て $0$ が丁度 $n$ 回続けば \[ \zti{a} = \frac{1}{10^n} \] と定義する。 このように定義すると \[ \zti{a+b} \leq \max \{ \zti{a},\zti{b}\} \] が成立することわかる。 例. $\zten$ では \[ 15 + 5 = 20\] のように足して絶対値が小さくなることはあっても、大きくなることはな い。

1の平方根

$ \zten $ の世界で \[ a_n = \frac{5^n-2^n}{5^n+2^n} \] とおくと、この数列は( $ \zten $ の世界で)収束し \[ \sqrt{1} = \lim_{n\to \infty} a_n \] が成立する。また、 $ a_n $ は $ \sqrt{1} $ と $ n $ 桁一致する。

例. \begin{alignat*}{3} a_1 &= \frac{5-2}{5+2}&&=\frac{3}{7} &&= \cdots1429\\ a_2 &= \frac{5^2-2^2}{5^2+2^2}&&=\frac{21}{29} &&= \cdots3449 \\ a_3 &= \frac{5^3-2^3}{5^3+2^3}&&=\frac{117}{133} &&= \cdots9249 \\ a_4 &= \frac{5^4-2^4}{5^4+2^4}&&=\frac{609}{641} &&= \cdots1249 \end{alignat*}

収束することの証明の前に、収束を仮定して、なぜこれが$\sqrt{1}$に収 束するのかを簡単に確認してみる。 \begin{eqnarray*} a_n^2 &=& \frac{5^{2n}+2^{2n}-2 \cdot 10^n}{5^{2n}+2^{2n} + 2\cdot 10^n } \\ &=& 1 - \frac{4\cdot 10^n}{5^{2n}+2^{2n} + 10^n } \end{eqnarray*} この第2項は$\zten$では非常に小さい数だから、これで2乗して1になる数 になりそうなことが納得できるだろう。 実際、極限を取れば \[ \lim_{n\to \infty} a_n^2 = 1 \] となり、左辺は $x^2$ の連続性を仮定すれば \[ \lim_{n\to \infty} a_n^2=\left(\lim_{n\to \infty} a_n \right)^2 \] とできるから、 \[ \left(\lim_{n\to \infty} a_n \right)^2 = 1 \] が得られる。

$ \zten $ における収束は易しい。単純に $ \zti{a_{n+1}-a_{n}}\to 0 $ を示せばよい(ここの説明は保留.) $ v = 5^n, t = 2^n $ とおく。 \begin{align*} a_{n+1}-a_n &= \frac{5v-2t}{5v+2t} - \frac{v-t}{v+t} \\ &= \frac{(5v-2t)(v+t)-(v-t)(5v+2t)}{(5v+2t)(v+t)}\\ &= \frac{6tv}{(5v+2t)(v+t)}\\ &= \frac{6\cdot 10^n }{(5v+2t)(v+t)} \end{align*}

よって\[ \zti{a_{n+1}-a_{n}} \leq \frac{1}{10^n} \] が得られる。これで収束性の証明は完了した。次に $ n $ 桁一致することであるが、 \begin{eqnarray*} |\sqrt{1}-a_n|_{10} &=& |(\sqrt{1}-a_{m+1}) + (a_n - a_{m+1})| \\ &\leq& \max\{ \zti{\sqrt{1}-a_{m+1}} , \zti{a_{m+1}-a_n} \} \end{eqnarray*} であり、充分大きい $ m $ を取れば \[ \zti{\sqrt{1}-a_m} \] はいくらでも小さく取れる。よって \[ \max\{ \zti{\sqrt{1}-a_m} , \zti{a_m-a_n} \} = \zti{a_m-a_n} \] の場合だけを考えればよい。 \begin{eqnarray*} \zti{a_m-a_n} &\leq & \left | \sum_{k=n}^{m}(a_{k+1}-a_{k}) \right |_{10}\\ & \leq & \frac{1}{10^n}. \end{eqnarray*} であるから、 \[ \zti{\sqrt{1}-a_m} \leq \frac{1}{10^n} \] が得られる。したがって、すくなくとも $n$ 桁一致することがわかる。

2乗しても変わらない数

\[x^2 =x\] の自明な解は $ 1 $ と $ 0 $ がある。非自明な解は \[ x=\frac{1\pm\sqrt{1}}{2} \] となる。 実際 \[ x^2 = \left( \frac{1\pm\sqrt{1}}{2}\right)^2 = \frac{2\pm 2\sqrt{1}}{4}=\frac{1\pm\sqrt{1}}{2} =x \] が満たされることが確認できる。 したがって、 \[ \sqrt{1} = \cdots239954784512519836425781249 \] から $2$ 乗して不変な数も求められる。 \[ \frac{\sqrt{1}+1}{2} = \cdots619977392256259918212890625 \]

$(\sqrt{1})^2=1$ の確認.

3 6 4 2 5 7 8 1 2 4 9
× 3 6 4 2 5 7 8 1 2 4 9
3 2 7 8 3 2 0 3 1 2 4 1
1 4 5 7 0 3 1 2 4 9 9 6
7 2 8 5 1 5 6 2 4 9 8
3 6 4 2 5 7 8 1 2 4 9
2 9 1 4 0 6 2 4 9 9 9 2
2 5 4 9 8 0 4 6 8 7 4 3
1 8 2 1 2 8 9 0 6 2 4 5
7 2 8 5 1 5 6 2 4 9 8
1 4 5 7 0 3 1 2 4 9 9 6
2 1 8 5 5 4 6 8 7 4 9 4
1 0 9 2 7 7 3 4 3 7 4 7
1 3 2 6 8 3 7 5 3 9 6 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1

$x^2=x$ の確認.

1 8 2 1 2 8 9 0 6 2 5
× 1 8 2 1 2 8 9 0 6 2 5
9 1 0 6 4 4 5 3 1 2 5
3 6 4 2 5 7 8 1 2 5 0
1 0 9 2 7 7 3 4 3 7 5 0
1 6 3 9 1 6 0 1 5 6 2 5
1 4 5 7 0 3 1 2 5 0 0 0
3 6 4 2 5 7 8 1 2 5 0
1 8 2 1 2 8 9 0 6 2 5
3 6 4 2 5 7 8 1 2 5 0
1 4 5 7 0 3 1 2 5 0 0 0
1 8 2 1 2 8 9 0 6 2 5
3 3 1 7 0 9 3 8 4 9 1 8 2 1 2 8 9 0 6 2 5

零因子の存在

$ \zten $ では零因子が存在する。 なぜならば \[ \sqrt{1} +1 = \cdots25781250 \] は零ではなし、また \[ \sqrt{1} -1 = \cdots25781248 \] も零ではないが

\( \begin{align} (\cdots25781250)(\cdots25781248)=(\sqrt{1}+1)(\sqrt{1}-1)=\sqrt{1}^2-1^2=1-1=0 \end{align} \)

となるからである。

$(\sqrt{1}+1)(\sqrt{1}-1)=0$ の確認.

2 5 7 8 1 2 5 0
× 2 5 7 8 1 2 4 8
2 0 6 2 5 0 0 0 0
1 0 3 1 2 5 0 0 0
5 1 5 6 2 5 0 0
2 5 7 8 1 2 5 0
2 0 6 2 5 0 0 0 0
1 8 0 4 6 8 7 5 0
1 2 8 9 0 6 2 5 0
5 1 5 6 2 5 0 0
6 6 4 6 7 2 8 0 0 0 0 0 0 0 0