10 進数の絶対値と距離

ここまで、何度か $\zten$ の世界について議論したが、 今回はもう少し本格的に $ \zten $ の世界を調べる。 そうはいっても、あまり厳密な議論はしない。

$ \zten $ の定義

$ 10 $ 進整数と呼ばれる集合 $ \zten $ を \[ \mathbb{Z}_{10}=\{\mbox{小数点を考えない無限桁まで許した $ 0 $ 以上の数全体 }\} \] によって定義する。記号で書けば

\[ \zten = \{ a_0 + a_1 10 + a_2 10^2 + \cdots + a_n 10^n + \cdots | a_k \in \{0,1,2,\cdots,9 \}(k=0,1,2,\cdots) \} \]

によって、定義する。 例.

\begin{align} 0 \in \zten, \quad 1 \in \zten, \quad 1225 \in \zten,\quad \cdots 1212121212 \in \zten,\quad \cdots2131324 \in \zten. \end{align}

Note. 後にこの集合 $\zten$ に「距離の構造」を入れる。

10進絶対値

$ \zten $ では、通常の絶対値とは異なる「 $ 10 $ 進絶対値」という別の絶対値を考える。

定義. 任意の $ 0 $ ではない $x\in \zten$ に対して、$x$ の1の位から見て最初 $n$ 桁が $0$ であるとき、 \[ |x|_{10} = 10^{-n} \] と定める。$ x=0 $ のときは $ \zti{x} =0 $ とする。

例 $ 1 $ .

\( \begin{align} |31|_{10} = 1,\quad |120|_{10} = \frac{1}{10}, \quad |300|_{10} = \frac{1}{100}, \quad |123000|_{10} = \frac{1}{10^3}, \quad \zti{\cdots22220} = \frac{1}{10}. \end{align} \)

10進数の世界の距離

$ 10 $ 進整数環 $ \zt $ において、 $ 10,10^2,10^3,\cdots $ という列を考えると

\( \begin{align} |10|_{10} = \frac{1}{10} ,\quad |10^2|_{10} = \frac{1}{10^2} ,\quad |10^3|_{10} = \frac{1}{10^3},\quad \cdots \end{align} \)

となるからこの列は $ 0 $ に収束する数列となる。 $ \zt $ の世界では「 $ 10 $ で割れれば割れるほど小さい数である」といえる。 今、この $ 10 $ 進絶対値を用いて、 $ \zt $ の二つの元 $ a,b $ の距離を \[ d_{10}(a,b) = |a -b |_{10} \] によって定義しよう。このように距離を定めれば、 $ a $ と $ b $ が近いとは $ a-b $ が $ 10 $ で多く割れるということだといえる。 例. $ 2+10^{100} $ と $ 2 $ は $ \zt $ の世界では、とても近い数だと言える。実際 \[ d_{10} (2+10^{100},2) = | (2+10^{100})-2|_{10} \leq |10^{100}|_{10} = \frac{1}{10^{100}} \] となるからである。

負の数は $ \zten $ に含まれるのか

$ 99 $ と $ -1 $ は $ \zt $ において近い。なぜならば、二つの数の距離は \[ d_{10} (99,-1) = \zti{ 99 - (-1) } = \zti{ 100 } = \frac{1}{100} \] となるからである。同じ議論で $ 99999 $ と $ -1 $ は $ \zt $ において、非常に近くなることがわかる。実際 \[ d_{10} (99999,-1) =\zti{ 99999- (-1) } = \zti{ 100000 } = \frac{1}{10^5} \] となるからである。つまり $ \cdots999999 $ と $ -1 $ は $ \zt $ において無限に近い数だとみなせる。無限に近い数は等しいという自然な解釈をすれば、 \begin{equation} \cdots999999 = -1 \qquad (\rm eq1) \end{equation} が $ \zt $ において成り立つことになる! 実際 $ \cdots 999999 + 1 = \cdots 00000 $ であり、この右辺を $ 0 $ だと解釈するのは自然であるだろう。つまり $ \cdots 999999 + 1 =0 $ 、すなわち $ \cdots999999 = -1 $ となる。 (eq1)が成り立つと認めれば、(eq1)の両辺から $ 1 $ を引くことにより \[ \cdots999998 = -2 \] が得られる。同様にして、 \begin{eqnarray*} -3 &=& \cdots999997 \\ -4 &=& \cdots999996 \\ -5 &=& \cdots999995 \\ & \vdots & \\ -100 &=& \cdots999900 \\ &\vdots & \end{eqnarray*} となることがわかり、定義から右辺はすべて $ \zt $ の元であることがわかる。 したがって、次が得られる \[ \mathbb{Z} \subset \zt. \]